メディック!メディック!!
戦争映画を見てると結構な確率で聞くことができるセリフです。
仲間が負傷した際、応急処置に衛生兵を呼ぶときですね。
呼ばれるとサッと飛んできて、処置を始める。瞬時にどこが損傷してるか判断し、応急処置を行う。格好いいです。
映画では助からないシーンの方が多いのですが。。。
ところで、そんな衛生兵が傷口に白い粉をかけているシーンを見たことありませんか。
あれって何でしょうか。
止血剤?消毒薬?
いえいえ、あれはサルファ剤と呼ばれる抗菌薬です。
傷口で細菌が繁殖すると化膿し病態が悪化するので、それを防ぐためですね。
今回はサルファ剤について詳しく解説したいと思います。
サルファ剤とは
薬理的にはサルファ薬といいます。サルファ薬は古くから用いられてきた抗菌薬です。
代表的なものにスルファモノメトキシンがあります。
どうやって抗菌するの?
サルファ薬は細菌などの葉酸生合成経路におけるジヒドロプロテイン酸合成を阻害することによって葉酸の合成を阻害し、抗菌します。
葉酸はDNA合成やアミノ酸合成の補助として働き、生体が活動する上で必要不可欠な物質です。
高等動物では、葉酸は食事などにより体外から摂取することができますが、細菌などは体外から摂取することができません。
よって、体内での葉酸の合成を阻害されると、細菌は死滅してしまうのです。
・動物種によるサルファ薬の投与方法の違い
ブタやニワトリ→経口投与
ネコ→注射
耐性菌?!
細菌も負けてばかりではありません。
葉酸の合成が阻害されても、新たな合成経路を獲得し薬に耐性を示すものがあります。
そのような細菌を薬剤耐性菌と呼び、今まで効果があった薬が効かないということが起こります。
これはサルファ薬だけでなく他の薬でも起こり得ることで、薬剤耐性菌の出現は近年、大きな問題となっています。
ST合剤
現在では、サルファ薬は単独では使わず、トリメトプリムという薬剤と併用して使用されます。
トリメトプリムは葉酸代謝拮抗薬であり、先に述べた葉酸がDNA合成などの補助的な役割をすることを妨害します。
つまり、葉酸の合成は止められないけど、葉酸の働きを阻止することができるということですね。
これをサルファ薬と併用することによって、より効果的に細菌にダメージを与えることができ、且つ耐性菌の出現も抑えることができます。
ちなみにSTとは
サルファの”S”とトリメトプリムの”T”
のことであり、ST合剤ではなく強化サルファ薬と呼ばれることもあります。
以上が今回の無駄話となります。
戦争の映画で衛生兵が白い粉をかけている時は存分にこの知識を語ってください。
それでは。